私共の未来の運命を制するとも言えるこの地球環境を維持し、より向上させ得るものは、科学技術をおいてありません。その科学技術の一翼を担う新しい技術である膜構造技術は、近年、建築等、特定の分野であるが、著しい発展を見せています。
又、地上空間から始まった膜構造物は今や水中、土中、宇宙空間へとその用途を拡げつつあります。
1960年に30億人であった世界人口は、2028年時点で80億人を超え、更に今世紀中には100億人になるものと考えられています。この地球に対し人類の生存のために、科学技術がもっと効果的に使われなければなりません。その点において膜構造は材料が最も少なくて済むという長所を持ち、宇宙開発を始め、海洋、土木、農業等、ほとんど全ての分野で大きな可能性を有しているにもかかわらず、本来有している多くの優れた利点を十分に発揮しているとは言い難いと思われます。砂漠の緑地化、寒冷地の開発、海洋環境の整備、宇宙開発等から太陽エネルギーの利用、省資源、リサイクル等の具体的なプロジェクトの中で、膜構造の活躍の場は、無限に存在すると考えます。
そういう状況の中で、膜構造の研究体制は未だ不十分で、我国においても、若干の研究者が独自に研究に従事しているに過ぎません。膜構造の可能性を引き出すためには、膜材料の素材の研究、膜材料の性質、性状の把握、膜面応力の解析手法等、及び構造としてのフィージビリティスタディーなど、基礎的な研究から応用技術まで、より高度な研究が押進められなければなりません。又、国内にかぎらず諸外国との研究者による知識の交流、情報の交換は、膜構造、及び、膜構造技術の発展のために欠くことのできない事項です。
このような認識に立って、膜構造技術の研究開発活動の助成、及び、国際交流への助成並びに人材の育成を行うことにより膜構造技術の発展を図り、もって科学技術と社会経済の発展に貢献することを目的として、財団法人を設立し、具体的に推進しようとするものであります。