Stadiums with Membrane Structures for 2002 FIFA World Cup KOREA / JAPAN TM
大分スポーツ公園 総合競技場 ビッグアイ
インタビュー 図版
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所在地: 大分県大分市松岡・横尾
設計: KTグループ
(黒川紀章建築都市設計事務所 竹中工務店九州支店 さとうベネック 高山總合工業)
施工: KTグループ建設工事共同企業体
(竹中工務店九州支店 さとうベネック 高山總合工業)
用途: サッカー、陸上
建築面積: 51,830m2
延床面積: 92,882m2
構造: 上部架構:鉄骨造 
本体屋根構造:アーチ架構+三角格子骨組架構
下部スタンド架構:鉄筋コンクリート造 耐震壁を含むラーメン架構
屋根形式: 球面上を約20分で移動する球体スライド方式
膜種類: 25%透光性四フッ化エチレン樹脂コーティングガラス繊維布 一重膜
膜面積: 29,000m2
開閉屋根駆動方式: ワイヤトラクション方式
スタンド傾斜角度: 最大33°
階数: 地下2階 地上3階
竣工: 2001年3月竣工
収容人員: 43,000席

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インタビュー 黒川紀章
(インタビュアー:高橋真)

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世界劇場としてのスタジアム /大分スポーツ公園総合競技場
球によって作られた開閉ドーム
大分スポーツ公園の中心施設として位置づけられるこの競技場は、球の一部を切り取り、地面に伏せたような明快な形態が印象的な建築です。屋根の中央部には楕円形の開口があり、単調になりがちな球形屋根の一部を切り取った美しい曲線を描いています。そのうえ楕円形の開口部はテフロン®膜の可動屋根によって閉じることもできるのです。
開口から自然光を取り入れ、地面から浮いた屋根の周辺から風を取り込み、芝生のサッカーグラウンドを取り囲むスタジアムは第二の自然ともいえる環境を内部に作っているかのようです。

テフロン®膜だから出来る
この建築物は、サッカーのワールドカップの試合から、国体の陸上競技、あるいは文化イベント、大規模な音楽ライブまで、さまざまな用途に利用することが可能な多目的スタジアムとして計画されています。その内部で行われる多様な利用形態に対する建築家の解答は、「球」というこれ以上単純にすることが出来ない形態に基づくものでした。
屋根の開閉機構も、球面状の屋根の上を同じ球面状の膜屋根が走って開口部をふさぐという実に単純明快な方法です。この施設の愛称「ビッグアイ」にふさわしく、楕円の開口部を両側から覆う膜屋根はさながら巨大な瞼のようです。開口部を覆った状態を外から見れば、大目玉に密着したコンタクトレンズのようです。架構をも含めた可動屋根がこれほど薄く、さらに建築の固定された部分と一体性を持って作ることができたのは、球体を選んだ基本構想に負うところが大きいのでしょう。そして同時にテフロン®膜という素材とそれによって膜面を作る技術が欠かせません。軽量で耐候性を持ち、強い張力強度と同時に光の透過性をもつ膜屋根が、切り取られた球体というシェル状の形態を持つことで、薄く、建築と一体となった可動屋根を実現させているのです。

背骨と肋骨
photo球状の全体形状、つまり正円形の平面を持つ屋根に開けられた開口部は楕円形で、その下には長円形のスタジアムが置かれて、ピッチの両端には両陣営のゴールがあります。天の球体から極性を持った四角い地のフィールドに降りてくるというところでしょうか。構造体もその長軸方向に背骨を持ち、短軸方向に肋骨を持つ方向性を持ったものとされています。また背骨にあたるスタジアム長軸方向のトラス梁に沿って可動式のカメラが走り、試合の展開を追いかけることが出来ます。この背骨は南北方向を向いていて楕円の開口はその方向に深く切れ込んでいます。そして、芝生に必要な日照がこの形によって得られるのです。

巨人の瞬き
可動屋根は肋骨に沿って背骨と平行にせり上がり、背骨の真上で閉じます。
下部に巻き上げ部を持つワイヤーにより引き上げられるのですが、それぞれの肋骨の曲率が異なりワイヤーそれぞれの負荷もちがいますし、しかもこの大きさです。巨人の瞬きは、コンピューターによってそれぞれのワイヤーの負荷や外力を常に計算しながら制御する高度のテクノロジーによっても支えられているのです。これだけの開口面積で比較するデータはないかも知れませんが、このシンプルな形態は恐らくコストの点でも役立っているはずです。

建築家の世界観
photo平面計画は円の全体形の中に長円形のアリーナを配し、その異なる形態の隙間に諸施設を配置した、一般解とも言える明快なものです。この方法は同じ建築家の手による豊田スタジアムとも共通のものです。しかし敷地の大きさや設計条件の差を別にしても、ふたつの建築物の形態はまったく異なっています。また建築を通じて送られてくるメッセージも異なっていて大変興味深いものがあります。
どのような点かというと、スポーツの文化的な側面をより強く感じさせる豊田スタジアムに対して、この建物は建築家の自然観や世界観をより多く伝えているようにも思えるところです。劇場にせよ、スポーツスタジアムにせよ、我々はそこで日常生活と切り離された凝縮された時間と世界を体験します。芝居やスポーツの試合、ライブ等の熱狂のなかで我々はつかの間、彼岸の世界に移れるのです。だからこそそれを期待して劇場やスタジアムに出向く我々にとって、退屈な試合やつまらないショーほどうんざりさせるものはありません。
大分スポーツスタジアムが、他の同様の目的を持った施設と大きく異なる点は、冒頭にも述べたように、世界そのものを切り取ってそこの場所に位置づけたような、特異な宇宙を思わせるところなのです。

宇宙を見つめる眼
宇宙を思わせるのは、球という形からくるものなのか、周辺環境との対比によるものなのかは分かりません。建築家は、意味を生まない限られた数の記号であるアルファベットから、様々な文学の世界が広がってゆくことに例えて、単純な幾何学形態の組み合わせが無限の造形につながることを示唆しました。「賢者の石」を追い求めた西欧の宇宙誌は、言語の組み合わせによる無限の世界観に辿り着く、とある文献で読んだことを思い出します。
これは単なる符合にすぎませんが、我々の脳の中には松果腺と呼ばれる器官があり、それは退化した、目のようなものであったそうです。人間には地上を見る二つの目の他に、天空を見上げる第三の目が脳天に備わっていたらしいのです。宇宙を捨てて地上に留まったときから、それは不要のものとなり退化したといいます。空だけを見つめている大目玉を見て、ふとそんなことを思い出しました。

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配置

3階平面
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断面
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北立面(開いた状況)
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南立面(閉じた状況)
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大分県ホームページ URL:http://www.pref.oita.jp
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